イフ・ヒー・ウォークト・イントゥー・マイ・ライフ
(IF HE WALKED INTO MY LIFE)
イーディ・ゴーメ(EYDIE GORME)の「イフ・ヒー・ウォークト・イントゥー・マイ・ライフ」(IF HE WALKED INTO MY LIFE)です。
●HARMONY RECORDのオリジナル盤になります。レコード番号は、KH-30319。HARMONY RECORDSはCOLUMBIAの傍系レーベルです。
このレコードは、1970年頃にリリースされたもので、過去の3~4枚のアルバムからセレクトされた、要はコンピ・アルバムです。「Don’t Go To Strangers」から3曲、「Softly As I Leave You」から2曲、「The Sound Of Music And Other Broadway Hits」から1曲、「Country Style」から2曲ほどセレクトされています。
収録曲は、A面に、「What Did I Have That I Don’t Have?」、「What Makes Me Love Him?」、「If He Walked Into My Life」、「Ev’ry Time We Say Goodbye」、「As Long As He Needs Me」の5曲、B面に「Life Is But A Moment」、「How Did He Look」、「Guess I Should Have Loved Him More」、「No One To Cry To」、「Make The World Go Away」の5曲の計10曲です。
コンピ・アルバムですからパーソネルは多岐に渡ります。が、ドン・コスタのが多いんじゃないかと想像されます。
A面の1曲目は「What Did I Have That I Don’t Have?」です。「Don’t Go To Strangers」に収録されていた曲で、これは間違いなくドン・コスタのアレンジです。この当時は彼のアレンジで歌を盛り上げていましたから、60年代を感じさせつつも、中々に聴かせてくれます。限界が分かってしまいそうなトーンですけど、それを知り尽くした上手いアレンジかもしれません。嫌味じゃないんですけど、対比がオーバーで、ドンっとコスッタ感じでしょうか?
2曲目が「What Makes Me Love Him?」、出典が不明ですが、コスタのアレンジとは違うような情趣を聴かせてくれます。バッキングは控えめにして、彼女のボーカルを浮かび上がらせる手法ですね、素直な歌唱がイケてます。「何が彼を愛させるの」ってな訳で、それがナニかは謎ですね。
3曲目がタイトル曲の「If He Walked Into My Life」、はなっから劇的ですねえ。途中でのリズムとの対比が尚更煽ってます。有名なシャウトですけど、彼女のは破綻しないから聴いててまずは安心。この曲で1966年のグラミー賞最優秀女性歌手部門を獲得しています。シナトラ華やかし頃ですから、こういう歌唱が受けたんでしょうね、今ならやや大げさとも言えなくはないです。情感たっぷりに、正に歌い上げてます。ベトナム戦争の影はまだそんなに感じられません。
4曲目は「Ev’ry Time We Say Goodbye」、ご存知コール・ポーターの名曲で、「Softly As I Leave You」からの選曲です。やけにシットリと歌い上げます。レイ・チャールズのそれとはアプローチが違って、泣けてくるのはこっちかな。たまにはオーケストラのバックじゃなくて歌ってほしかったと思わせる曲ですね。そういえばコルトレーンもこの曲を演奏していました、「My Favorite Things」で。
5曲目が「As Long As He Needs Me」で、これはミュージカルの曲をセレクトした「The Sound Of Music And Other Broadway Hits」からのセレクトです。「オリバー」で使われた曲で、いわゆるトーチ・ソングとされていますね。「彼が私を必要としている限り…」ですけど、さてどうするのでしょう? まあ、彼から苛められても彼を慕うような内容のようですから「どM」の歌かもしれません、「もう、どうにでもしてっ!」っていうノリでしょうか? 正に悲恋ですな。
さてB面ですが、1曲目は「Life Is But A Moment」、またもや冒頭から仰け反らせてくれます。こんなに大層なバッキングが必要だった時代だと勝手に解釈しておきましょう。途中でスペイン語らしき発音も出てきます。彼女はスペイン語が堪能だったらしく、その方面でのレコードも多くリリースしてました。そういえば、歌手になる前には国連で翻訳の仕事をしていたそうです。俗に言う「バイリンガル」ですね。「梅淋ギャル」じゃないんで、お間違いなきよう…。
2曲目が「How Did He Look」、これも「Don’t Go To Strangers」からの選曲ですけど、コスタにしてはシッポリさせるアレンジでいい感じです。Rチャンネルから聴こえるリズムが、とっても素敵!ってか。ちょいと甘えたような声も聴かせてくれて、ゾクッとしますよ(決してお姐が怖いわけではありません)。
3曲目は「Guess I Should Have Loved Him More」で、入りはテナー・サックスで哀愁を誘いつつ始まります。彼女は淡々と歌っているようにも聴こえますが、正確なディクションと抑え気味ながらも適当な抑揚でシットリです。「(前より)もっと彼を愛してるわ」なんて言われてみたいもんですねえ。この系統のをもう少し聴きたくなります。
4曲目は「No One To Cry To」です。これもテナーの入りで前曲と同じみたいですが、収録されたアルバムは異なるようです。最後の2曲は「Country Style」からのセレクトでした。前曲よりは明るめで健康的な感じです。で、コスタらしく最後は例によってきっちり盛り上げておしまい。
最後の曲が「Make The World Go Away」、邦題は「想い出のバラード」だそうで、エディ・アーノルドがヒットさせたカントリーのスタンダードですね。エルビスも確か歌ってました。どっちかと言うと男性の歌のように思いますが、野暮はいいっこなしで、聴きましょう。出だしをちょいとシャウトしておいて、その後は少々抑えつつ気分を込めて歌っています。「痛くしたなら(傷つけたなら)ごめんね、毎日お世話するわ… 世間はほっといて」ってな場面もありまして、お世話になりたいもんです。
生粋のオリジナル盤じゃないんですけど、1960年代後半の彼女を聴くには最適な1枚の一つかと思います。彼女の特徴は各曲に現れていて、何度も言いますが破綻のないシャウトは一聴の価値ありですね。
後年、テレビCMで彼女の歌唱(ボサノバでした)が流れて一時のブームになりました。名前も少々変わってますから、ミーハー受けしたんでしょうね。私もミーハーでは人後に落ちないと自負してますが、ブームが去ってもイーディはやっぱりエーディってなもんでした。ところで、彼女の本名は「エディス・ゴルメザーノ(Edith Gormezano)」だそうで、結構ゴツイお名前でした。父親はあのシシリー島出身なんで、うーむ、マフィアですかね?
※このレコード評は、旧き佳き時代とジャズへの想いを込めた音化店主:能登一夫の評文です。
オン・ステージ
(ON STAGE)
イーディ・ゴーメ(EYDIE GORME)の「オン・ステージ」(ON STAGE)です。
●ABC-PARAMOUNTのオリジナル盤になります。レコード番号はABCS-307。
このレコードは、1959年にリリースされたもので、ゴーメの若々しい張りのある声を堪能できます。「ON STAGE」というタイトルが付いていますが、録音されたのは当時新装なったと思われるラスベガスのコンベンションセンターです。
巨大なセンターの一角で録音された光景はジャケット裏面で確認できます。右端にゴーメとドン・コスタが位置しています。要は観客のいないライブ録音です。当時の技術で広いセンターにおいてステレオ録音というのは、結構大変だったとは思いますが、1958年の録音としては、相当グレードの高いものになっています。
ゴーメの声質は、声を張り上げてもうるさくはなりませんので、爽快に聴き通すことができます。CDでも再発されているようですが、ここはやはりオリジナルLPがベストのように思います。
※このレコード評は、旧き佳き時代とジャズへの想いを込めた音化店主:能登一夫の評文です。
ゴーメ・シングズ・ショーストッパーズ
(GORME SINGS SHOWSTOPPERS)
イーディ・ゴーメ(EYDIE GORME)の「ゴーメ・シングズ・ショーストッパーズ」(GORME SINGS SHOWSTOPPERS)です。
●ABC-PARAMOUNTのオリジナル盤、モノラル仕様になります。レコード番号はABC-254。
このレコードは、1958年にリリースされたもので、若々しい彼女の声を楽しめる稀少盤かもしれません。
アレンジはおなじみのドン・コスタが担当し、一応安心して聴ける部類で、中にはあのニール・ヘフティによる指揮も含まれています。
何度か言及しましたが、彼女の声はシャウトしても喧しくならず、快適に聴くことができる稀有な存在だと私は思います。
一時期テレビのCMなどに起用され、ほんの少し話題になりましたが、それ以来は相変わらずの過小評価で過ごしている彼女が不思議でなりません。再評価されても決しておかしくはない彼女の歌唱を楽しむには好適なアルバムだと、内容的にも自信を持ってお薦めします。
最近、このアルバムはCD限定版でリリースされたようですが、オリジナル・モノラルLPの厚みとは無縁なもののように思われます。
※このレコード評は、旧き佳き時代とジャズへの想いを込めた音化店主:能登一夫の評文です。
ドント・ゴー・トゥ・ストレンジャーズ
(DON’T GO TO STRANGERS)
イーディ・ゴーメ(EYDIE GORME)の「ドント・ゴー・トゥ・ストレンジャーズ」(DON’T GO TO STRANGERS)です。
●COLUMBIAのオリジナル盤、モノラル仕様になります。レコード番号はCL-2476。
このレコードは、1966年にリリースされたもので、まだまだ若々しい彼女の声を楽しめます。アレンジはおなじみのドン・コスタが担当しており、一応安心して聴ける部類です。
タイトル曲の「DON’T GO TO STRANGERS」は、エッタ・ジョーンズの唄でヒットしましたが、ややPOPに振った歌をここでは聴かせてくれます。ただ、この曲だけアレンジは皮肉なことにドン・コスタではありません。また「WHAT’S NEW」などは後年のリンダ・ロンシュタット辺りと比較しても、ちょいと劇的な差を感じます。
最近、このアルバムは「SOFTLY,AS I LEAVE YOU」(1967年)とカップリングされてCDでリリースされましたが、2つのアルバムジャケットを左右に貼り合せた無造作安直ジャケットで興ざめです。オリジナルLPの神々しさとは無縁なものに堕落していると感じるのは私だけでしょうか。
※このレコード評は、旧き佳き時代とジャズへの想いを込めた音化店主:能登一夫の評文です。