ライブ・アット・ザ・ライトハウス
(LIVE AT THE LIGHTHOUSE)
エルヴィン・ジョーンズ(ELVIN JONES)の「ライブ・アット・ザ・ライトハウス」(LIVE AT THE LIGHTHOUSE)、2枚組です。
●BLUENOTEのオリジナル盤になりますが、ジャケット右上が若干カットされた「カット盤」です。レコード番号はBN-LA015-G2。
パーソネルは、ドラムスにエルヴィン・ジョーンズ、ソプラノサックスとテナーサックスにデイヴ・リーブマン、テナーサックスにスティーヴ・グロスマン、ベースにジーン・パーラという、ピアノレス変則クァルテットです。
エルヴィンにはロリンズと組んだピアノレス・トリオによるライブ盤(ご存知「ヴィレッジ・ヴァンガードの夜」)がありますが、リーブマンとグロスマンの二人でロリンズ一人分(あるいはコルトレーン一人分)と解せば、似たようなフォーマットでのライブになり、何処か期するところでもあったように思うのは穿ち過ぎでしょうか…。
このアルバムは1972年9月9日にCAの「ライトハウス」で録音されたライブ盤で、「灯台」を意味する「ライトハウス」に向かって魚たちが泳ぐ水族館のようなジャケットで有名です。ジャケットを開くと海中から少しずつ姿を現すエルヴィンの写真にコワイものがあり、一体誰がこんなデザインをするのかと文句もつけたくなります。
1960年代末からコルトレーンの衣鉢を継ぐような位置付けにあったエルヴィンのプレイが如実に収められており、コルトレーン・チャイルドとでも言うべきリーブマンとグロスマンを従えた演奏は今でもキキモノです。
ドラムスとベースの織りなす、ある種ストイックでもあるリズムに乗って、挑発し合うが如きリーブマンとグロスマンの白熱的なプレイは聴き応えがあり、強いて言うならば緻密でやや計算づくのリーブマンと感性のおもむくままアグレッシブなグロスマン(あるいは素直なグロスマンとやや斜に構えたリーブマン)の対比が面白いと思います。
エルヴィンがリーダーですからドラム・ソロにも結構なパートが割かれており、今更ながらエルヴィンの妙技に頷くしかありません。得意(特異?)のゲロゲロも収録されており、うっかりすると装置が不調になったのかと怪訝に思います。
言い忘れましたが、ジーン・パーラのベース・ソロも迫力があっていい出来です。
収録曲の一つに「FANCY FREE」があり、この曲はドナルド・バードの作曲で1969年にリリースされた、同名アルバムに収められていました。実はリリース順は逆ながら、全く同じ場所「ライトハウス」における同年(4月21日)のライブ盤で、グラント・グリーンのアルバムがあります(勿論BLUENOTE)。そしてこのアルバムにも「FANCY FREE」が収録されており、時代の為せる業なのか、なにやら不思議な関連を感じます。
そう言えばグラント・グリーンのアルバムも、彼の顔が幾重にも重なった奇妙にコワイ雰囲気のジャケットです。同時期ですからこういう描写が流行っていたのでしょうか? 流行で片付けるには余りに安易ではありますが…。
1972年頃と言えば、片やウェザー・リポートやリターン・トゥ・フォーエヴァーなどが話題の中心でしたが、このライブ盤のようなハードなアルバムも同時に存在したわけで、楽しい時代ではありました。
エルヴィンのグループには、このアルバムの直前にジョー・ファレルが在籍していましたが、彼がチック・コリアと行動を共にしたため、リーブマンとグロスマンを雇ったように思えます。また、この直後にキーボード奏者のヤン・ハマーを雇っていますから、正にその端境に当たる時期に生まれた稀有なアルバムではないでしょうか。
ところで、リーブマンはその後「ルック・アウト・ファーム」やコルトレーンのトリビュートなどで名を馳せますが、グロスマンは一体何処に行ってしまったのでしょうか。最近全く消息を聞かないように思います。
※このレコード評は、旧き佳き時代とジャズへの想いを込めた音化店主:能登一夫の評文です。