ギル・エヴァンス(GIL EVANS)

img125スヴェンガリ
(SVENGALI)

ギル・エヴァンス(GIL EVANS)の「スヴェンガリ」(SVENGALI)です。
●ATLANTICのオリジナル盤になります。レコード番号、SD-1643、ステレオ仕様です。

パーソネルはギル・エヴァンス・オーケストラで、ピアノにギル・エヴァンス、トランペットにテックス・アレン、ハンニバル・マーヴィン・ピーターソン、リチャード・ウィリアムス、テナーサックスにビリー・ハーパー、アルトサックスにデヴィッド・サンボーン、フレンチホルンにピーター・レヴィン、シャロン・フリーマン、トロンボーンにジョセフ・デイリー、その他リードにハワード・ジョンソン、トレヴァー・ケーラー、ギターにテッド・ダンバー、ベースにハーブ・ブッシュラー、ドラムスにブルース・ディトマス、パーカッションにスーザン・エヴァンス、シンセサイザーにデヴィッド・ホロヴィッツというような構成です。

このレコードは、1973年にリリースされたもので、ギル・エヴァンスとしては一つのピークに当たるのではないでしょうか。この翌年だったかに、「Plays Jimi Hendrics」をリリースしていますね、こちらも名盤です。

大体、日本でもアメリカでも過小評価の最たる人でして、マイルスと共演したことのある白髪のオッサンくらいの認知度しかなかった彼でした。しかしこの頃から達者なソロイストを揃えて、魅力的な音楽を奏でていたことはこのアルバムからも明らかですね。この後、ジャコ・パストリアスを加えたオーケストラで来日もし、NYのクラブにも毎週出演していたようで、晩年になって漸く陽の目を見たというところでしょうか。

1970年代のいつ頃だったか、かのSJ誌にインタビュー記事が載っていました。若かりし私はその記事を読んでも「何だか変なオッサンだなあ」くらいの感想しか抱きませんでした。リリースされたレコードもその当時は少なかったと思います。もう少し早く前線に出て来てほしかった一人には間違いありません。

ところで、タイトルの「SVENGALI」は「GIL EVANS」のアナグラムだって知ってました? 誰でもわかりますか…、失礼。でも「スヴェンガリ」って何なの?と尋ねられると返答に窮しませんか。実は「スヴェンガリ」とはイギリスの有名な小説(もしくは戯曲)に出てくる悪魔的人物の名前なのです。異常な芸術に対して、それらへの偏執の余り、正しく異常で悪魔的行動を採ってしまう人物のことで、邦題「悪魔スヴェンガリ」で公開された映画もあったそうです。私は見ていませんが、さぞかし普通じゃない映画だったんでしょうね。

というわけで、この辺りのレトリックが洒落てて、実に「音の魔術師」たるギル・エヴァンスへの敬意も込めたタイトルなのかと想いを巡らせてくれます。

収録曲は、A面に「Thoroughbred」、「Blues In Orbit」、「Eleven」の3曲、B面に「Cry Of Hunger」、「Summertime」、「Zee Zee」の3曲、計6曲になります。

さて1曲目の「Thouroughbred」ですが、これは「サラブレッド」ですね。競馬を連想させますが、アメリカでのそれは競馬ではないようで、ホルンとチューバが効果的に「ブリブリ」いってます。ギターソロの後はチューバのソロが挟まれており、これが聴きもの。何だかドルフィーじゃないですが馬のいななき的に聴こえてまっせ。バッキングが微妙に変わっていくのも斬新ではあります。

2曲目は「Blues In Orbit」で、鬼才というか変なオッサンのジョージ・ラッセル作になります。テーマにして案外にフリーなアプローチで、それが終わるやいなやデヴィッド・サンボーンのシャープなソロが聴こえます。ボケた演奏だけではなく、こんな演奏もできるサンボーン君でした。その後はビリー・ハーパーのドキドキソロが続きます。ハーパーはいいプレイヤーだと思っていたんですけど、最近は全然聞きませんね、どこでナニをしているやら…。最後までところどころにチューバが聴こえて、エー感じでした。ギルのオッサン、エー歳こいてよーやりますな、前衛的アプローチに脱帽です。

3曲目の「Eleven」は、あっという間に終わる不思議な曲ですが、マイルスとの共作ということで捨てることのできないチューンなんだろうなと思います。後年にジャコがこの曲を採り上げていましたから耳にした人も多いのではないでしょうか。そういえば、ワード・オブ・マウスなどのアプローチと似てますね。

B面の1曲目は「Cry Of Hunger」です。ビリー・ハーパーの曲で、「渇望の涙」などと訳されるようです。当たり前にハーパーが頑張ったところを聴かせてくれます。コルトレーンの洗礼を受けるとこういうプレイになるんだよとでも言いたげな、然もありなんの演奏で、半分以上が彼のソロで埋められてます。出だしのアヴァンギャルドっぽいアンサンブルも、らしくていいんですが、途中で聴こえているフルートみたいなピーヒャラは何なんでしょう。

2曲目は「Summertime」、ご存知のスタンダードです。その昔、「ポーギーとベス」でマイルスと組んで演ってましたね。かつてはマイルスのミュートがフィーチュアされてたんですが、ここではテッド・ダンバーのギターを採り上げています。まずまず変態っぽくて聴き応えがあると言えますか…。最後の曲は「Zee Zee」で、これだけライブ演奏のようです。マーヴィン・ピーターソンのトランペットが印象的で、マイルスかと思わせるようなアプローチもあり、彼も中々の芸達者でした。ハンニバルと言えば、例の「ハンニバル」をついつい思い出しますが、彼へのニックネームの方が先だったようですね、○○さん。どうにもおどろおどろしいバッキングに合わせて、ハンニバルが咆哮しています。ほんでもって、このタイトルなんですが、ナニを意味しているのか実はよく分かりませんでした。

長々と綴ってしまいましたが、これは名盤の一つですね。魔術師「スヴェンガリ」の圧倒的演奏はいかがでしょう?


※このレコード評は、旧き佳き時代とジャズへの想いを込めた音化店主:能登一夫の評文です。







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