イン・サンフランシスコ
(IN SAN FRANCISCO)
キャノンボール・アダレイ(CANNONBALL ADDERLEY) の「イン・サンフランシスコ」(IN SAN FRANCISCO) です。
●リバーサイドのオリジナル盤になります。
キャノンボールのおそらくは最高傑作の一つだと思います(私はこれが一番気に入っていました)。
パーソネルは、アルト・サックスにキャノンボール・アダレイ、コルネットに弟のナット・アダレイ、ピアノにボビー・ティモンズ、ベースにサム・ジョーンズ、ドラムスにルイス・ヘイズで、何とも真っ黒けのクインテット。演奏も推して知るべしでしょ
う。
※このレコード評は、旧き佳き時代とジャズへの想いを込めた音化店主:能登一夫の評文です。
キャノンボール・イン・ニューヨーク
(THE CANNONBALL ADDERLEY SEXTET IN NEW YORK)
キャノンボール・アダレイ(CANNONBALL ADDERLEY) の「キャノンボール・イン・ニューヨーク」(THE CANNONBALL ADDERLEY SEXTET IN NEW YORK) です。
●RIVERSIDEのオリジナル盤モノラル仕様になります。レコード番号はRLP-404。
パーソネルは、アルト・サックスにキャノンボール・アダレイ、コルネットに弟のナット・アダレイ、テナー・サックスにユゼフ・ラティーフ、ピアノにジョー・ザヴィヌル、ベースにサム・ジョーンズ、ドラムスにルイス・ヘイズで、「IN SAN FRANCISCO」と比べると、ピアノがボビー・ティモンズからジョー・ザヴィヌルに代わり、テナーにユゼフ・ラティーフが加わったことになります。
このレコードは1962年にニューヨークのヴィレッジ・ヴァンガードで録音されたライブ盤で、「IN SAN FRANCISCO」から3年程あとのアルバムです。プロデューサーはご存知のオリン・キープニューズです、まだ生きてるそうですよ。
ピアノが真っ黒けの代表選手たるボビー・ティモンズからジョー・ザヴィヌルに代わりましたので、黒さが薄れるかと危惧されましたが、ご存知のように白くても黒いザヴィヌルでしたから、そういう心配は杞憂に過ぎませんでした。
また本国に比べて日本での評価があまりにも低いユゼフ・ラティーフで、確かに些か抹香くさい雰囲気(中東気分とも言います)を醸し出すラティーフは日本人の感覚とはちょいとズレているところがあるかもしれません。とは言うものの、おそらくは音楽監督的地位にザヴィヌルがいたので、中々に充実したセクステットだったんじゃないかと想像されます。
収録曲は、A面に「Introduction」、「Gemini」、「Planet Earth」の3曲、B面に「Dizzy’s Bisiness」、「Syn anthesia」、「Scotch and Water」、「Cannon’s Theme」の4曲、計7曲です。
キャノンボールって、当たり前なんですがあだ名でして、本名はジュリアンでした。何だかニューハーフみたいな本名ですね。大体、太ったオッサンにジュリアンはないでしょう。こういう太り方をしたオッサンに陰鬱な人はあまりおらず、陽気な人が多いですね。例に違わずキャノンボールもホントに脳天気に笑かしよるオッサンで、それほど賢そうに見えないところが粋です。弟のナットがまたよく似た体型の似た者兄弟ですから、漫才コンビでも大成したんじゃないかと想像されます。
マイルスの下を辞してからのキャノンボールの諸作はオーバー・ファンクと揶揄される傾向も持ち合わせていたかもしれません。しかし、単に節操がないという一言で括るにはあまりにも勿体無い、熱気溢れる演奏には間違いなく、このアルバムもキャノンボールの特質が横溢した名盤だろうと思います。
なお、レコード番号ですが、盤での表記はRM-404になっていますが、ステレオ仕様とモノラル仕様が同時に存在したこの時期には、「RS」がステレオ、「RM」がモノラルを表していたように推測されます。ジャケットでは「RLP-404」の表記になっています。
※このレコード評は、旧き佳き時代とジャズへの想いを込めた音化店主:能登一夫の評文です。
フィドラー・オン・ザ・ルーフ
(FIDDLER ON THE ROOF)
キャノンボール・アダレイ(CANNONBALL ADDERLEY) の「フィドラー・オン・ザ・ルーフ」(FIDDLER ON THE ROOF) です。
●CAPITOLのオリジナル盤、ステレオ仕様になります。レコード番号はST2216。
パーソネルは、アルト・サックスにキャノンボール・アダレイ、トランペットとコルネットに弟のナット・アダレイ、テナー・サックスとフルートにチャールズ・ロイド、ピアノにジョー・ザヴィヌル、ベースにサム・ジョーンズ、ドラムスにルイス・ヘイズで、「IN NEW YORK」のメンバーからユゼフ・ラティーフが抜け、代わりにチャールズ・ロイドが加わったという構成になります。
このレコードは1964年にニューヨーク(!)のキャピトル・スタジオで録音されたもので、録音年月日の前後はあるものの、CAPITOLへ移籍してからセクステットとしての初アルバムになるようです。
収録曲は、A面に「Fiddler On The Roof」、「To Life」、「Sabbath Prayer」、「Chavalah」の4曲、B面に「Sewing Machine」、「Now I Have Everything」、「Do You Love Me」、「Matchmaker」の4曲、計8曲です。
アルバム・タイトルの「Fiddler on the roof」とは、すなわち邦訳「屋根の上のヴァイオリン弾き」ということで、演奏曲は件のミュージカルに題材を求めたものになります。大体、このミュージカルのブロードウェイ初演が1964年とされていますから、その同じ年に録音しているわけで、「My Fair Lady」の前例があるとは言え、中々流行に敏感なCAPITOLの姿勢が窺えますな、良きにつけ悪しきにつけ。
題材がミュージカルなんですが、そこはキャノンボール、決してオリジナルらしきアレンジがミエミエの演奏にはなっていません。はっきり言って、毎度おなじみイケイケ路線で行きたくてしようがないといった趣きを感じさせてくれる好演です。つまりは抑えようとしても抑えきれない血が騒ぐんですね、この方は。
何でも、この録音前にはフィラデルフィアへツアーに出ており、ツアー中に幾らかリハーサルしたのみでこの録音に臨んだといいますから、そんな極端に原曲のアレンジなんぞを尊重した演奏ができるはずもありません。と言うか、そうでなくて良かったんじゃないすかね、結果としては。
1964年にテナー・サックスがユゼフ・ラティーフからチャールズ・ロイドに交代しましたので、例のアジアン・フレーヴァー(抹香くさいともいいます)は姿を消し、モダン調に変化した時期に相当します。このアルバムでもロイドのフルートがフューチュアされていますが、ちょいと吹きだしそうな印象を覚えるのは私だけでしょうか…。おもろいでっせ。
しかし、ジョー・ザヴィヌルは相変わらず好調なようで、欧州人とは思えないファンクさを現していますし、ベースのサム・ジョーンズも図太い音でビンビン迫ります。
キャノンボールなんですが、渾名というか通称というか芸名なのは、よくご存知でしょうが、本名は「ジュリアン」ですから笑わせますね。しかしあの巨体に「ジュリアン」が似合わないのは当ったり前で、芸名にしといてよかったね。
ジャズに興味をもちだした頃に、何処かの雑誌でこんな文章を目にしました。「ブルーノートのキャノンボールのサムシンエルスのマイルスのオータム・リーブスは傑作だ」、普通の人が普通の知識でこんな文章を初見で理解できるわけがない。「青い冊子の砲弾の何かのマイルス…」にしかならんよね。
とまあ、いろいろ話題に事欠かないキャノンボールではありました。
※このレコード評は、旧き佳き時代とジャズへの想いを込めた音化店主:能登一夫の評文です。
ホワイ・アム・アイ・トゥリーテッド・ソー・バッド!
(WHY AM I TREATED SO BAD!)
キャノンボール・アダレイ(CANNONBALL ADDERLEY) の「ホワイ・アム・アイ・トゥリーテッド・ソー・バッド!」(WHY AM I TREATED SO BAD!) です。
●CAPITOLのオリジナル盤、モノラル仕様になります。レコード番号はT-2617。
パーソネルは、アルト・サックスにキャノンボール・アダレイ、コルネットに弟のナット・アダレイ、ピアノにジョー・ザヴィヌル、ベースにヴィクター・ガスキン、ドラムスにロイ・マッカーディというクインテット構成です。
このレコードは1966年にリリースされたとされていますが、一説によると1967年にLAで録音されたとも言われており、真偽は定かではありません。レコード番号からは1966年頃ではないかと想像されますが…。
いずれにしても、キャノンボールが日本に来て録音した「IN JAPAN」と同じメンバーですから、ほとんど変わりのない演奏と言って過言ではありません。と言うより、実はこのアルバムのほうが「IN JAPAN」よりもファンキー、ノリノリです。日本で手抜きしていたのか、CAPITOLお膝元のLAで頑張ったのか、ご想像にお任せします。「Mercy, Mercy, Mercy」が入っていたので、「IN JAPAN」を買いましたが、期待に違う出来でがっかりしたことを思い出します。日本の聴衆が大人しくて、録音も小綺麗なのが却って災いとなった好例でしょう。熱気たるや、このアルバムに軍配が上がります。
特にホーンとピアノのプレイが歴然と違うように聴こえます。ボビー・ティモンズと交代したザヴィヌルですが、白さを全く感じさせない黒さで、違和感は全くありませんね。今はどうしているのでしょうか…。
収録曲は、A面に「Mini Mama」、「I’m On My Way」、「Why?(Am I Treated So Bad)」の3曲、B面に「One For Newk」、「Yvette」、「The Other Side」、「The Scene」の4曲、計7曲になります。
1曲目から全開バリバリです。この曲はカーティス・フラーの作曲らしいのですが、そんなものはどこへやら、ファンキー・コテコテの名演です。曲が終わってから、おそらくはキャノンボールの「ミニママ、ミニママ」と叫んでいる声がイカシテますか?
2曲目は、ナットの頑張りぶりが顕著な演奏です。何せ自作自演ですから頑張るのも無理ないところで、カワユスですかね。
3曲目は何だかよく分からないタイトルですが、「Mercy, Mercy, Mercy」に似ているように聴こえる曲で、多分ここからザヴィヌルはインスピを得たのではないかと勝手に勘繰っています。結局は頂いちゃったのかよ、ザヴィヌル。
さてB面、4曲中の3曲にザヴィヌルのクレジットがあり、脳天気なキャノンボールに代わって音楽監督的位置を占めていたであろうザヴィヌルの真骨頂が聴けるんじゃないかとワクワクしますね。
1曲目の「One For Newk」ですが、「Newk」といえば、確かソニー・ロリンズのニックネームじゃなかったですかね。ロリンズに捧げるんだから、それなりの出来を期待しますね。期待ははてさてどうですか、ザヴィヌルのバッキングがホーンを鼓舞してヨサゲです。普通の白人ならこんなプレイは望むべくもないほどクロクロで、若い頃に頑張りすぎてハゲたんでしょうかね。ヒゲだけは後年もモッコリでしたけど、頭髪はどうだったんでしょう。この当時の日本公演を知らないだけに何とも言えません。
2曲目の「Yvette」って、誰かの名前なんでしょうか? やけにゆっくりしたテンポでコテーっと続きます、と思ったらあっという間に終わってしまいました。
3曲目はナットの手による曲で、相変わらずのパープーな雰囲気を横溢させた名曲で、これが長い、8分以上もあるブリブリ・プレイです。キャノンボールの後を受けたナットのプレイは、最初はシミジミと出てきたなと思いきや、すぐにいつものノーテンキ路線でイカシテます、ワッハッハ。ここでもザヴィヌルはブラックで、一体ナニを食べてたんだか、教えてくれよ。タイトルは「もう片一方」とかいう意味なんでしょうが、どこが「もう片一方」なのか分かりませんね、同じサイドじゃないの?
最後の曲はナットとザヴィヌルの共作になっている曲ですが、いかにものテーマ・ソングらしく、パーソネルを紹介して終わります。言わば、全くのオマケ、キャノンボールの声がよく響きます。で、おしまい。
マイルスの下を辞してからのキャノンボールの諸作はオーバー・ファンクと揶揄される傾向も持ち合わせていたかもしれません。しかし、単に節操がないという一言で括るにはあまりにも勿体無い、熱気溢れる演奏には間違いなく、このアルバムもキャノンボール・クインテットの特質が横溢したレア盤じゃないかと密かに思っています。
※このレコード評は、旧き佳き時代とジャズへの想いを込めた音化店主:能登一夫の評文です。