ANITA_O'DAYピック・ユアセルフ・アップ・ウィズ・アニタ・オデイ
(PICK YOURSELF UP WITH ANITA O’DAY)

アニタ・オデイ(ANITA O’DAY)の「ピック・ユアセルフ・アップ・ウィズ・アニタ・オデイ」(PICK YOURSELF UP WITH ANITA O’DAY)、モノラル仕様です。
●VERVEのオリジナル盤になります。レコード番号はMGV-2043。

2、3回に分けて録音されたものですからパーソネルは結構多岐にわたります。

2グループがバックを務めていまして、片やハリー・スィーツ・エディソンのトランペット、ラリー・バンカーのヴィブラフォン、ポール・スミスのピアノ、バーニー・ケッセルのギター、ジョー・モンドラゴンのベース、アルヴィン・ストーラーのドラムスというセクステット。

片やバディ・ブレグマンのオーケストラで、メンバーにはコンテ・カンドリ、ピート・カンドリ、ミルト・バーンハート、フランク・ロソリーノ、ハーブ・ゲラー、バド・シャンク、ジョージ・オールド、ボブ・クーパー、ジミー・ジュフリー、ポール・スミス、ジョー・モンドラゴン、アルヴィン・ストーラーなどのクレジットが確認されています。

ウェストの名だたるプレーヤーが一同に会したようなメンバーで、流石はノーマン・グランツといったところでしょうか。

このアルバムは1956年に録音されたもので、暫く第一線から遠ざかっていた彼女を再び売り出すべくノーマン・グランツが力を注いだ頃のリリースです。

この頃の彼女のアルバムには、「THIS IS ANITA」と「ANITA SINGS THE MOST」があり、本アルバムと併せて3部作たる位置付けになるはずですが、どういうわけか本アルバムだけが不遇をかこったような扱いになっています。不思議な現象だとは思いませんか?

一部ジャズ・ファンの間では「巨乳」アルバムとして有名らしく、確かに他のアルバムでの彼女、あるいは「真夏の夜のジャズ」での彼女を見る限りではシンジラレナーイ巨乳ぶりです。大体、38歳にしてこんなに尖ったシルエットがありえますかねえ…。フェイクということでご理解ください。

収録曲は、A面に「Don’t Be That Way」、「Let’s Face The Music And Dance」、「I Never Had A Chance」、「Stompin’ At The Savoy」、「Pick Yourself Up」、「Stars Fell On Alabama」の6曲、B面に「Sweet Georgia Brown」、「I Won’t Dance」、「Man With The Horn」、「I Used To Be Color Blind」、「There’s A Lulu In My Life」、「Let’s Begin」の6曲の計12曲です。

聴きどころはA面の後半3曲とB面の「Sweet Georgia Brown」、「Man With The Horn」でしょうか…。バド・シャンクと思しきアルトが中々効いてます。

アニタ・オデイは1918年生まれですから録音当時は38歳だったわけで、いかにもトウが立ちまくった年齢ではあるものの、歌唱を聴いている限りではそういうトウはあまり感じません。ジャケット写真のお顔立ちにはそれらしき年齢を感じますので、例の「トンガリ巨乳」はイカにもタコにもイクラでもって感じでござんすね。

今やLPどころか、不遇ゆえにCDでも見かけなくなったアルバムのようですが、持てる者の喜びとしてはLPに勝るものはないでしょう。結構強力にお薦めします。

というようなことを書いている最中に、アニタ・オデイの訃報が届きました。87歳だったそうで、ご冥福をお祈り申し上げます。いろいろ書いてしまってご免なさい。でも、貴女の歌声をいつまでも私たちは覚えています。楽しいときをありがとう。


※このレコード評は、旧き佳き時代とジャズへの想いを込めた音化店主:能登一夫の評文です。