ウィズ・ザ・ソニー・クラーク・トリオ
(ART PEPPER WITH THE SONNY CLARKE TRIO)
アート・ペッパー(ART PEPPER)の「ウィズ・ザ・ソニー・クラーク・トリオ」(ART PEPPER WITH THE SONNY CLARKE TRIO):STRAIGHT-AHEAD JAZZ VOLUME ONE です。
STRAIGHT AHEAD JAZZ RECORDSでのオリジナル盤、モノラルになります。
●レコード番号はSAJ-1001。このレーベルでの初リリースと窺える番号です。
STRAIGHT AHEAD JAZZ というレーベルは殆んど聞いたことがなく、似非レーベルかと思われがちですが、中々に普通のレコードをリリースしているようです。
このレコードは、1953年、5月31日にCAのライトハウスで録音されたライブ盤というクレジットがありますが、さるディスコによりますと1953年3月30日の録音との記載もあります。どちらが正しいのか定かではありませんが、1953年には違いなさそうです。
で、何といってもソニー・クラークがピアニストとして参加しているのが注目されます。また、さるディスコを正しいとすれば、年代的には例の有名な「サーフ・ライド」を録音した翌日のライブになります。ですから、中々にイケイケの演奏を繰りひろげていた頃になりますか…。
パーソネルは、アルト・サックスにアート・ペッパー、ピアノにソニー・クラーク、ベースにハリー・ババシン、ドラムスにボビー・ホワイトというメンバーです。
あまり詳しくはないのですが、ペッパーがソニー・クラークと共演したのは、このときしかないのかもしれません。そういう意味ではレアな逸品なのでしょうか。確かに、このレコードを購入したときにレコード屋(LAのレコード屋)のオヤジは、ペッパーとクラークだから「Very Rare!」みたいなことをほざいていました。持ち帰ってから調べてみましたが、この辺りの演奏を記した音源は珍しいような気もします。
収録曲は、A面に「Brown Gold」、「These Foolish Things」、「Tickle Toe」の3曲、B面に「Tenderly」、「Strike Up The Band」、「Night And Day」の3曲、計6曲になります。「Tenderly」だけ、ソニー・クラーク・トリオによる演奏で、その他はペッパーを加えたクァルテットによる演奏です。
1曲目はフェード・イン的に始まりまして、のっけからペッパーのソロを楽しめます。続くクラークのソロはいかにもそれ風で、リズムと合っているような合っていないような面白みがありますね。ハリー・ババシンなどは、所詮はこの程度かという程度をやっぱりの程度で聴かせてくれます。後半の交換部分などは中々に笑わせてくれます。
2曲目は、ペッパーのソロ×クラークのブロックによる対決から始まり、どこまで続くのかと思いきや、何とほぼ最後までこの調子で続けます。ベースやドラムスは殆んど活躍していません。トイレでも行って休憩中だったのでしょうか…。
3曲目はご機嫌なテンポで進みます。ペッパーのソロの後に続くクラークが快調に魅せてくれますな。マニアックに絡むところまで至らないババシンがババシンたるところです。そういえば、ババシンは「ババ」と「シン」ですから、思い出すのはかのG.馬場とT.J.シンで、確か対決していましたね。あっちの方が興奮するかも…。32文ドロップキックや脳天唐竹割りが懐かしくなります。
B面の1曲目はペッパー抜きのトリオでして、胡椒が抜けるとピリッとしないと思われがちですが、ここではそうではありません。後年の活躍を予感させるような(?)結構ウキウキな演奏です。ちょいと音が多いかなと思わせる箇所もありますが、らしさは十分に感じられます。少々物足りずに終わっていくのが胡椒抜きの所以でしょうか?
2曲目はアップテンポでノリノリです。聴きようによってはパウエル的に聞こえる節もあってゴキゲンです。ここではクラークがペッパーを食っちゃったような感じで、ええぞっ!ソニー、ってなもんですか。
で、最後に進んで3曲目です。「Night And Day」にしては少々速めのテンポに聴こえますが、ペッパーには好適なテンポです。ブロックでバッキングするクラークに乗っかって快調に飛ばしてくれます。続くクラークはブロックとシングル・トーンの組み合わせで展開しますが、ガーランドほど洒落た感じにならないのがクラークのクラークたる所以のようで、中々に笑かしてくれます。
というわけで、何だか出所のよく分からないレコードかもしれませんが、内容は紛れもないもので結構楽しませてくれる逸品のように思います。
普通に考えれば、ペッパーとソニー・クラークなんぞ合わないようにも思えるのですが、案外にそうでもないところを見せています。ゴロンゴロン・バコンバコンタッチでアーシーなクラークに、何やら我関せず風でオッペケペーのペッパーがかぶさって、何とも言い様のないスリルと場合によれば不協和音的な響きを醸し出して、これはオモロイ逸品でした。個人的には2曲目の「These Foolish Things」が嬉しかったですね。
※このレコード評は、旧き佳き時代とジャズへの想いを込めた音化店主:能登一夫の評文です。
ザ・レイト・ショウ
(THE LATE SHOW)
アート・ペッパー(ART PEPPER)の「ザ・レイト・ショウ」(THE LATE SHOW)です。
●XANADUでのオリジナル盤で、リリースは1980年になりますが、オリジナル録音は1952年のものです。
パーソネルは、アルトサックスにアート・ペッパー、ピアノにハンプトン・ホーズ、ベースにジョー・モンドラゴン、ドラムスとヴァイブにラリー・バンカーとなっています。
このレコードは、1952年の2月に、ロスアンゼルスはハリウッドの「サーフ・クラブ」で録音されたライブ盤2部作の後編です。前編は「THE EARLY SHOW」として、同じくXANADUからリリースされていました。ペッパーはこの後すぐに、麻薬によりジャズ界を暫く遠ざかりますので、正にデビュー直後の貴重な録音といえます。
例の寄せ集め的「サーフ・ライド」と同時期の演奏ですが、こちらの方がライブゆえに自由度が高く、好演かと思います。
※このレコード評は、旧き佳き時代とジャズへの想いを込めた音化店主:能登一夫の評文です。